柔軟性の高い「リアルタイム工程管理システム」の構築に成功。
工程別作業計画も半自動で生成して、少量短納期対応の体制を強化。

代表取締役社長 稲山正人氏

導入の背景

バーコードを使った工程管理を早くから導入したが、「リアルタイムな進捗把握」はできなかった

株式会社セイキ製作所(以下、セイキ製作所)は、マシンキーの専門メーカーとして、創業から約60年の長きに渡って技術とノウハウを積み重ねてきました。マシンキーとは、シャフトの回転をギアへ確実に伝えるため、シャフトに埋め込む部品です。セイキ製作所は、素材加工から研磨加工まで一貫した社内製作体制を整えると共に、標準規格品は豊富な在庫を用意することで、少量短納期のニーズに応えてきました。
顧客は全国500社以上の機械メーカーです。日常的に製造・販売しているのは約10,000アイテムですが、一品一仕様の特注品が多いため、実際に製造するマシンキーの種類は数万アイテムにのぼります。
500社以上の顧客へ、数万アイテムの製品を即納する。
これを効率的かつ正確に行うため、システム化には早くから取り組んできました。1980年代からIBMのオフコンAS/400を導入して販売管理を行うほか、バーコードを使った工程管理も導入してきたのです。
しかし、ハンディターミナルはオフコンには直結できません。無線データはいったんパソコンで受け取り、整理してから、CSVファイルで出力し、オフコンへ取り込む手順でした。
「このやり方だと製造の進捗状況を把握できるのが、どうしても半日遅れ、1日遅れになります。5~6年前から、工程管理と販売管理を一本化し、進捗状況をリアルタイムに把握して、短納期対応を強化したいと考えていました」と代表取締役社長 稲山正人氏は語ります。
オフコンが更改時期を迎えるのを好機として、必要な機能をどんどん開発していけるWindowsパソコン上でのシステム再構築に踏み切りました。

代表取締役社長 稲山正人氏

代表取締役社長 稲山正人氏

導入のポイント

防塵ボックス入りパソコンとバーコードリーダーを組み合わせて
リアルタイムな工程管理を低コストで実現

Windowsの世界では、生産管理システムがたくさん市販されています。しかしそのほとんどが、生産計画を立て、それを月・週・日へ落とし込んで実行していく形態です。
あらかじめ作った計画に従って人間が動くシステムは、『1回しか作らないもの』が圧倒的に多い当社の動きとは合いません。そうではなくて、いろいろ工夫しながら製造に取り組んでいる人間を、追いかけてカバーしてくれるシステムが必要でした」と稲山氏は言います。
要望に合うパッケージはなかなか見つからず、「ゼロからのスクラッチ開発しか方策はないのか」と肩を落としていた矢先に、出会ったのがJSTからの提案です。
「まず、25年間ブラッシュアップを重ね、かなり『当社独自仕様』になっている販売管理システムの機能を、Windowsパソコンで網羅できると約束してくれたので驚きました」と稲山氏。さらに、製造業向け生産・販売・在庫管理システム「楽商 メーカーLight」をカスタマイズしてバーコード対応にすることで、「リアルタイムな工程管理」を実現できます。
「また、ハンディターミナルは短期間でモデルチェンジをするので、買い直しにコストがかかるし、厳しい環境の加工現場で使うので壊れやすいという問題点を話したところ、防塵ボックスに収めたパソコンとタッチ式バーコードリーダの組み合わせを提案してくれました。バーコードリーダーなら安いし、無線環境も不要になります。しかも、ごく小さな画面しかないハンディターミナルとは違って、バーコードを読み込んだらすぐにパソコン画面を見て全体の状況をつかむ事もできます。『リアルタイムな工程管理』の具体的な姿がしっかり見える優れた提案でした」と稲山氏は語ります。

工場内の防塵ボックス入りPC

工場内の防塵ボックス入りPC

在庫引当、生産引当がきわめて柔軟。 特急案件は生産中の生産引当も可能

セイキ製作所の新しい販売管理とリアルタイム工程管理のシステムは、2012年7月に本稼働を開始しました。
同社が長年のノウハウを注ぎ込んでカスタマイズした機能は、現在では「楽商 メーカーLight(製造業向け バーコード対応工程管理システム)」というシリーズ名で、JSTから市販されています。
セイキ製作所におけるカスタマイズのポイントは、まず一品一仕様のものづくりが多い中小製造業向けの工程管理に徹することでした。
「たとえば、在庫引当と生産引当を柔軟に行えることにこだわりました。受注入力時には有効在庫を確認して、在庫引当するか、生産指示するか、あるいは、生産中のものから引当てするなどを自在に指示できます。製造途中のものを、特急案件のために分割生産に切り替え、一部だけ緊急生産することもできるのです」と稲山氏。過去履歴はいろいろな角度から条件検索できますから、今後の出荷予測や現在の生産負荷状況をチェックしたうえで、的確に判断できます。

構成図

また、通常の生産管理システムなら生産計画立案に相当する「工程決定」のプロセスは、半自動化されています。
ある商品を作るのに必要な工程と工数はあらかじめ登録してありますから、生産量と納期を入力するだけで、工程ごとの納期を自動計算して、「こういう段取りで作りなさい」という工程表が表示されます。もちろん、計算結果を見て、工程の順番変更・追加・削除、さらには緊急割り込みなどをすることも柔軟にできます。
工程が決定すれば、作業指示書を印刷します。このとき、マスター登録の段階で、基本仕様とともに、製造用の図面を登録しておいた商品は、作業指示書と同時に図面が自動的に印刷されます。
「製造機械の混み具合に応じて、磨きと穴あけの工程を入れ替えたり、汚れがあると判断すれば洗浄工程を追加したり、生産中に製造者が自分で判断して工程を変えられます。あくまでも『人間の動きに応じてシステムが動く』のです。より効率よく人間が動けるように業務フローや画面を工夫するところでは、JSTが幅広い業界の例を紹介しながら、役に立つ提案をいろいろしてくれました」と稲山氏は言います。

導入の効果

バーコードリーダ利用の工程管理システムは、「作る人」のモチベーションアップにも貢献

システム刷新の効果は、販売管理と工程管理の両面で大きく出ています。
まず販売管理・在庫管理は、オフコンの機能を網羅するどころか、機能を超えてより強力な体制になりました。
「従来は、1000個在庫があるところに100個の受注処理をすると、自動的に在庫が900個になっていました。これでは、システムの数値と倉庫の実数にズレが生じるので、棚卸や資産管理に大変な手間がかかります。今では、生産途中引当とか複雑な処理をしているにもかかわらず、楽商の数値と倉庫の実数はいつでもぴったり合致します。また、客先毎に異なる支払条件を柔軟に管理できるようになりましたし、売掛金回収管理も手間なく的確に行えるようになりました」と稲山氏は喜んでいます。
工程管理は本社でも工場でも、リアルタイムな進捗状況を把握・共有できるようになり、短納期対応の体制が強化されました。顧客対応もスムーズになり、掛かってきた電話を切ることなく手元の画面を覗くだけで、誰でも正確に納期回答できます
副次的な効果ですが、作業効率アップに対する社員のモチベーションが上がっているのも見逃がせません。
「工程ごとにバーコードをピッと読むと、パソコンの画面表示がサッと変わります。軍手をはめた手で紙をめくらなくてもいいのです。作業者は、パソコン画面で全体の進捗状況を見て、『この工程は急いだほうがいいな』、『今日はここまで進めておくべき』など考えながら作業します。Windowsで動くシステムですから、並べ替えたり、検索したり、『この工程を追加すると納期に間に合うか』と簡単なシミュレーションをすることもできるのです。工程管理システムがブラックボックスではなくなり、工程というデータが身近なものになりました」と稲山氏。
今では、毎日、前日までの未出荷件数、受注累計、月別工程別不良発生件数、工程別負荷管理などの表やグラフを見ながら朝の打ち合わせをしていますが、こうした管理資料は、若手社員が楽商データを使って自発的に作ったものであり、社員のほぼ全員が「自分に役立つ管理資料」を楽しんで作っているそうです。
セイキ製作所は、すでに楽商のデータをホームページへ掲載して、規格品の在庫を顧客が自分で検索して注文できるサービスを提供しています。さらに今後は、納期問い合わせも、顧客が自分できるようにしたいと考えています。

稲山氏は、JSTのサポートサービスについても、「操作質問や業務フローの相談への対応が非常に良い、速い」と高く評価しています。画面に表示されている用語の変更などは、電話をしてから30分もしないうちに、リモート操作で即座に修正が完了します。保守契約の範囲内ではありますが、利用者にとっては非常に信頼を持てるサービスということができるでしょう。
セイキ製作所は、マシンキーという“モノ”ではなく、『どのような形でもいいので、お客様の要望に応える』という“コト”が当社の商品だと捉えて、お客様1人1人の立場に立ったサービスに心をくだいてきました。JSTのサービスは、取り組み姿勢の根幹が、当社と同じだと感じます」と、稲山氏はにこやかに語りました。

笑顔で取材対応して頂いた稲山氏

笑顔で取材対応して頂いた稲山氏

株式会社セイキ製作所 様

代表者:代表取締役社長 稲山正人 / 業種:精密機械部品製造業
事業内容:JIS規格/JIS規格外マシンキー、平行キー、スッピルの製造・販売
URL:http://www.seiki-ss.co.jp/

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