導入の背景
無線ハンディターミナルを使って ヒューマンエラーを「ゼロ」にしたい
株式会社向島自動車用品製作所(以下、向島自動車用品製作所)は、東京都葛飾区に本社を置くカー用品の卸会社です。
「1958年の創業から約40年間は、タイヤホイール、ミラー、ハンドル等を製造してきました。しかし、消費者ニーズが多様化するなか、製造業というスタイルでは、さらに短期化するトレンドサイクルに対応することがむずかしくなってきました。そこで、西暦2004年ごろを境に、『問屋専業』へと転換したのです」と、業務部 係長の渕上裕樹氏は説明してくれました。
業態は転換しても、カー用品業界を熟知しているだけに、ニーズを予測する力、商品を選定する力、提案力などには自信があります。カーエアコン送風口に取り付けるドリンクホルダーなど、向島自動車用品製作所が企画し、メーカーと共同開発し、大手カー用品専門店に提案して成功させたヒット商品はたくさんあります。向島自動車用品製作所が総発売元であるガラスコーティング剤「AC Five」も、25年間で100万本以上売れ続けるロングセラー商品になりました。
仕入先である約70社のカー用品メーカーとは、商品パッケージの改善や説明文の書き方などをきめ細かくアドバイスしながら、イーブンな信頼関係を築いています。客先である大手カー用品専門店と、仕入先の双方へ積極的に働きかけながら、消費者ニーズのキャッチアップに努めてきたのです。
一方で、業務を支える販売管理システムについては、いくつかの課題を抱えていました。
「10年以上使っていた旧システムは、売上を計上して伝票を出す機能しかありませんでした。受注機能がないので出荷指示書は手書き、在庫管理ができないから発注書も手書き、経理と連動しないので二重入力になるなどの問題が多々ありましたが、改善するには多大なプログラム作成料金が必要だったのです」と、業務部 係長の渕上裕樹氏は当時を振り返ります。
ハンディターミナルも、データを貯めるだけのバッチ式でした。商品のバーコードを読み取っても、事務所に戻り、パソコンにつないでデータを吸い上げてみないと、商品や個数が正しいかどうかを確かめることができません。したがって、ピッキング、出荷検品、仕入検品のデータ照合は、人間の目視チェックに頼るしかありませんでした。正確を期するために、出荷まで最低3回、作業者とは別の人がチェックするルールにしていましたから、手間も時間もかかっていました。
「厳に戒めなければならないのが、誤出荷です。たった1回ミスをしても、『誤出荷する会社だ』とお客様に思われてしまい、一度失った信頼は取り返すことができません」と渕上氏は強調します。
客先は、間違った品物を着払いで送り返してきますし、こちらは正しい商品を1個だけでも大急ぎで送り直さなければならず、余分なコストがかかります。けれども、向島自動車用品製作所が扱っている商品は2万アイテムもあり、常時動いているものだけでも4000アイテムにのぼります。チェックミスを「ゼロ」にすることは非常に困難であり、作業者はいつも大きなストレスを抱えていました。
「お客様の中で1社だけはEOS(オンライン受発注システム)対応しており、物流センターから直接データをもらい、出荷指示書とハンディターミナルをバーコード連動させることができました」と渕上氏。
しかし、EOS対応は取扱商品の1割程度にすぎませんでしたし、バッチ式のハンディターミナルでは、受注からピッキング、出荷検品までを効率よい一連の流れにすることができませんでした。
事態が急展開したのは2013年のことです。この大手カー用品専門店が、インターネット経由のWeb-EDIに切り替えることになりました。同時に、全国の店舗が向島自動車用品製作所へ直接注文していたのを改め、本部で全国の注文を取りまとめて一括発注する体制を作ることになりました。旧システムではWeb-EDIに対応できず、販売管理システムの刷新が急務になりました。
導入のポイント
比較ポイントは「無線ハンディターミナル、無線LAN、Web-EDI」
渕上氏は、Web検索して広く情報を集め、最終的に7社に絞ってヒアリングをしました。
「当社の社長はパソコンやシステムをとてもよく知っている人ですが、あえて、コンピュータのことをあまり知らないわたしをシステム刷新の担当者に据えて、『最低4~5社のベンダーから勉強させてもらいなさい』と指示されました」と渕上氏は語ります。
「楽商」をみつけたのは、検討期間の最後のほうだったそうです。「ホームページで、『無線ハンディターミナル連携』が強調してあったうえに、卸業への納入がたくさんあると聞いて、『うちの会社に合っているようだ』とピンと来るものがありました。問屋の業務改革と無線ハンディターミナルは、切っても切れない関係にあるからです」と渕上氏。
ピッキングや検品のミスを「ゼロ」にしたい、また、伝票の手入力を脱却するためにも、バッチ式ではなく無線ハンディターミナルを導入したいと強く望んでいました。さらに各社から提案を求めてみると、「楽商」はコストパフォーマンスが抜きん出ていることがわかりました。
「販売・在庫管理の機能はどの製品もだいたい同等でしたから、無線ハンディターミナルの導入、そのための無線LAN構築、Web-EDI対応、この3つが比較検討の焦点になりました。『楽商』よりも製品価格の安い製品もありましたが、当社が望んでいて『楽商』なら実現できる機能を列挙して確認したところ、『当社にはできません』とコンペから下りてしまいました。また、ある製品の場合は、無線ハンディターミナルの導入にはシステム本体のカスタマイズが必要であるうえに、Web-EDIも処理順序などの設定項目の数だけ、カスタマイズ料金が加算されるしくみであるため、総額が『楽商』の4~5倍になる見積もりでした」と渕上氏。
卸業対応の堅牢な販売管理・在庫管理システムに、無線ハンディターミナル、無線LAN構築、Web-EDI対応の3つを加えたトータルコストは、「楽商」が最も低価格だったのです。
EOSからWeb-EDIへの切り替えに低コストでスムーズ対応
2014年3月、向島自動車用品製作所は「楽商」を導入し、同年6月、本稼働を開始しました。広い倉庫には、無線LANのアクセスポイントを7ヶ所設置しました。
「わたしはシステム購入や入れ替えを初めて担当したわけですが、移行はスムーズに進みました」と渕上氏。EOSからWeb-EDIへの切り替えも、客先のスケジュールに合わせてタイムリーに行うことができました。バーコード対応商品が一気に取扱商品の過半数を占めるという事態にも、現場は混乱なく対応することができました。
さらに使い始めてから実感したのは、「楽商」はサポート料金が安く、ここでも大幅なコスト削減ができたことでした。
「サポート契約料が旧システムの半分以下でしたから、当初は『安すぎるぞ。だいじょうぶか』と半信半疑だったくらいです」と渕上氏は明かします。
ところがふたを開けてみると、以前よりもはるかにクイックレスポンスであり、的確なサポートを受けることができました。コールセンター経由ではなく、「うちの担当者」へ直接電話することができるため、問題解決にかかる時間も短くなりました。
「しかも、JSTの担当者は、こちらが言ったことに対して、『できる、できない』とか『○○円かかります』という返事で済ませたりしないで、『どこに問題があるのか、どうすればいいのか』と当社の立場に立って考えてくれます。『その作り込みはやめた方がいいです。こういう運用の工夫をして乗り切りましょう』というアドバイスをもらったときは、ビックリしました。当社に、無駄なお金を使わせないようにと考えてくれるのですからね」と渕上氏はにっこりします。
導入の効果
ピッキング、検品にミスがなくなり、伝票手書きからも脱却
「楽商」を導入し、無線ハンディターミナルにしたことで、業務の流れは変わり、スピードアップとミス撲滅に成功しました。
システム刷新が、業務改革につながったのです。
「ピッキングでも出荷でも、間違った商品や個数はその場ではじかれますから、ミスがなくなり、誤出荷が起きなくなりました。受発注、入出庫のプロセスから伝票手書き作業がなくなり、業務効率が大幅に向上しました。ベテランしかできなかった検品作業の手間と時間も大幅に削減できました」と渕上氏。
作業がスピードアップして残業が減り、ミスも起きなくなったことは、コスト削減にも貢献しています。リアルタイムな在庫が「見える」ようになり、臨機応変な在庫引当が可能になったのも、無線ハンディターミナルの大きな成果です。
「倉庫で棚を見て在庫が少ないことに気づいたら、ハンディターミナルで発注済みであるかどうかを確認し、未処理であればその場で追加発注するなど、現場の判断で機敏に動けることは欠品防止にも役立っています」と渕上氏は言います。
また、業務の平準化も実現できました。
「FAXされてくるお客様の注文書はフォーマットがさまざまで、品番が記入されている位置も千差万別です。これをすばやく読解するには、経験が必要でした。品番を見ただけでどの棚にあるかがわかり、すぐ動く人でないと、ピッキング作業を頼めなかったのです」と渕上氏。
今では、Web-EDIで送られてきたデータからすぐに、使いやすいピッキングリストが出力され、誰でも正確なピッキングができます。新人でも1人で動けるようになりました。
「これまでは、毎日7時間働けるパートの方だけを雇っていましたが、今では1日3時間勤務でも仕事を覚えられます。パートの方もいろいろな働き方ができて喜んでいますし、仕事の混み具合に応じて、人員配置を変えることも楽にできるようにもなりました」と渕上氏は言います。
最 近では、Web-EDI対応でない客先も、表計算ファイルで注文品の一覧表を作り、メール添付して送ってくれます。「楽商」は表計算ファイルのデータを取 り込めますから、こちらもピッキングリスト出力までの作業が非常にスムーズ。受注データを手入力する作業はほとんどなくなりました。
今後は、営業が出先でも在庫を確認できるようにするなど、改革の効果を会社全体へ広げていきたいと、意欲は広がっていきます。
株式会社向島自動車用品製作所 様
代表者:代表取締役 小泉 恒夫
事業内容:自動車用アクセサリー/携帯電話グッズの卸売
- どのサービスが一番適している?
- 課題がまだまとまっていない。
- こういう事例はある?
- 見積もりだけでもいい?