抱えていた課題
マンパワーに頼る作業をできるだけシステム化したい
課題1.ECサイトと基幹システムがつながっていなかった
株式会社サス・スポーツプロダクトは、学校教育用品の専門商社です。主力の学校指定品販売(以下、「学販」)では、首都圏中心に約180校と販売契約しており、全国屈指の事業規模を誇ります。
体育服、制服の販売に不可欠なのが採寸会です。
「しかしコロナ禍で、採寸会においても、密集の軽減が求められたため、2021年に急いでECサイトを立ち上げました」と、株式会社サス・スポーツプロダクト 常務取締役の木幡(コハタ)典仁氏は語ります。
ECサイトで注文と支払いができるようになったことで、採寸会は「サイズ確認だけの場」となり、大幅な時間短縮ができました。
しかし、初代のECサイトは、基幹システムと連携していませんでした。
受注担当者は、ECサイトから注文データをテキスト出力し、変換したり整理したりする手間をかけて、基幹システムへ取り込んでいたのです。
課題2.2つの基幹システムが連携せず別々に動いていた
学校販売の繁忙期である1~5月、基幹システムとなるのが「学販システム」です。
その学販システムは、1990年代にJSTがスクラッチ開発したオフコンシステムを使用していましたが、2001年に、Windowsサーバーベースの「楽商 V3.0」をカスタマイズして移行。スクラッチ開発システムの良さを継承した学販システムとして、20年以上使い込んできました。
一方、6~12月の学販閑散期に発生する個別の追加注文や、契約校以外の学校、スポーツ施設、官公庁などへの一般販売については、「楽商 V3.0」をカスタマイズした「一般販売システム」を使用してきました。
学販は現金売り、一般販売は売掛であるなど、商品手配や入金の流れが異なるため、学販システムと一般販売システムは別々に運用してきました。
そのため、データチェックなどの余計な人手作業が発生していたのです。
課題3.お客様満足度向上のため、さらなる業務のシステム化が不可欠に
「学販というのは、お客様にとっては、学校が指定するものを買わなければならないという強制力を伴います。だからこそ、お客様には、購入の最初から最後まで満足していただかなければなりません。あらゆる角度からお客様満足度を高めることを、当社は常に意識しています」と木幡常務は強調します。
お客様満足度を高めるために、システム連携、業務のシステム化・デジタル化、業務効率アップ、DX推進などへ積極的にチャレンジすることは、サス・スポーツプロダクトの企業戦略の根幹となっています。

常務取締役 木幡(コハタ)典仁氏
選定理由
最新技術環境で多様なシステム連携をサポート
同社の基幹システムとは、「楽商 V3.0」をカスタマイズして、20年以上使い込んできた「学販システム」です。
2022年、この基幹システムを刷新することが決まり、5社コンペの結果「楽商」カラーサイズ が選ばれました。
選定理由1.主力業務の「学販」を熟知していたJST
「1990年代にスクラッチ開発してもらった学販システムは非常に優秀で、当社がやりたいことを確実に実行するしくみになっていました」と木幡常務。
2001年にパッケージ製品である「楽商 V3.0」へ移行しても、優れたしくみはきちんと継承してきました。
「2022年、システムを刷新するにあたって、JSTを含めて5社でコンペをしましたが、まず、当社が『学販システムの要件』を説明して、理解できたのはJSTだけでした」と木幡常務。
「やはりJSTにしてよかった。要件定義のフェーズでも、こちらの要望をすぐに理解してくれるので、スケジュール通りに進めることができたのです」と木幡常務は語ります。
選定理由2.かゆいところに手が届く、30年以上のサポート実績
「JSTとは非常に長いつきあいですが、常に『かゆいところに手が届く』サポートをしてくれます。ちょっと無理なお願いをしても、どうして何がいつまでに必要なのか、SEが業務をわかっているので、必要な機能を必要な時までに用意してくれて、とても助かっています」と木幡常務は評価します。
選定理由3.システム化、デジタル化のさらなる進化を支える先進技術環境
「楽商」カラーサイズ は、ユニフォーム販売代理店に特化した業種別パッケージであり、加工指示など、業界の商習慣に則った機能があらかじめ搭載されているため、学販システムも最小限のカスタマイズで移行できました。
さらに、クラウドへの対応、多様な他システム連携、RPA※活用などの環境が整っています。業務のシステム化、自動化、デジタル化を安心して推進できる先進的なプラットフォームであると、サス・スポーツプロダクトは評価しました。
※RPA:ロボティック・プロセス・オートメーション。人手で処理していた業務を自動化する技術。楽商はRPAベンダーともパートナー契約をしており、具体的なRPA活用提案が可能。
導入効果
ECサイト連携とクラウドへの移行でDXが新たなステージへ
効果1.ECサイトと基幹システムを連携
「楽商」カラーサイズ は、さまざまな外部システムとの連携が容易にでき、ECサイトとの連携も多くの事例があります。
そこで、ECサイト自体も新しく作り直して、「楽商」カラーサイズ と連携させることにしました。
ECサイトとの連携は、JSTがECシステム構築ツールのベンダーと連絡をとり、サス・スポーツプロダクトを中心に3者が円滑にコミュニケーションを取りながら、効率よく作業を進めました。
基幹システムと連携した新しいECサイトは、2024年に完成。運用を開始しました。
以前は、ECサイトのデータを人手で整形してから基幹システムへ取り込んでいたため、1校約300人の取り込みに30~60分かかっていましたが、現在は自動取り込みが問題なくできたことを確認するわずか5~10分のチェック作業だけで済みます。取り込み作業時間を約6分の1へと大幅に短縮できました。
人為ミスが発生しないように注意しながらデータの整理をする精神的な負担もなくなったことも喜ばれています。
さらに、業務のスピードアップで、商品手配までのリードタイムを短縮できたことも大きな成果です。
ECサイト利用校の採寸会は、申込書記入の必要がなく、サイズ確認のみで完了するため、滞在時間が3分の1程度に短縮されました。そのため、現場スタッフも従来の4名体制から、2~3名体制へと人員削減ができました。従来は、約100名のアルバイトを雇って採寸会を運営していましたから、人件費抑制にもつながります。
また、ECサイトは、学販の細かいノウハウが盛り込まれるため、開発も運用もサス・スポーツプロダクトの社員が行っています。
「基幹システムの学校マスター、商品マスター、サイズマスターを取り込めるようになったので開発が楽になり、1日に構築できるサイトが、従来の5校から、10校程度に増えました。1校あたりのECサイト構築時間が、ほぼ2分の1に短縮されたわけです」と木幡常務。
効果2.別々に動いていた2つの基幹システムを統合
別々に稼働していた学販システムと一般販売を、「楽商」カラーサイズ で統合しました。
「各種マスターも苦労しながら統合しましたので、入力ミスの心配をすることなく、安心して業務ができるようになりました。ECサイトからの注文データも、学販/一般販売の両システムへ振り分けてスムーズに取り込めます」と、木幡常務はにこやかに語ります。
効果3.外注倉庫から基幹システムへアクセスして業務効率アップ
システムの運用環境も一新。自社にサーバーを置いて社員が運用管理する「オンプレミス運用」を脱して、プライベート・クラウドでの運用へ移行しました。
クラウドへ移行したねらいのひとつは、VPNを引くといった手間をかけずに、業務委託先からも基幹システムへ簡単にアクセスできる環境を整えることでした。クラウド型の「楽商」カラーサイズは、クラウドライセンス料を支払うだけで、制限をかけつつ、新しいクライアントがすぐにアクセス可能となります。
サス・スポーツプロダクトは、繁忙期には何万点もの商品を短期間で仕入れ、配送するため、複数の倉庫会社を協力会社として利用します。クラウドへ移行してからは、これら外注倉庫からも学販システムへ直接アクセスしてもらうことにしました。
従来は、納品書、ピッキング指示書、運送会社の送り状などの帳票類は、サス・スポーツプロダクトで印刷し、外注倉庫へ配送していました。さらに、注文情報、顧客情報、帳票類の変更差し替えなどは、別途でメール連絡していました。
今では外注倉庫が学販システムへ直接アクセスできるため、サス・スポーツプロダクト社内での帳票印刷と配送の作業や、追加情報のメール連絡は一切不要になりました。倉庫でも、作業の進捗に合わせて必要な帳票をそのつど発行できるため、業務効率が上がっています。
運用のポイント
学販システムの画面からそのまま外注倉庫と双方向コミュニケーション
繁忙期、外注倉庫でも学販システムを使えるようにするにあたっては、いくつかの点を工夫しました。
まず、アクセス権限をきめ細かく設定して、セキュリティの歯止めをかけたことは言うまでもありません。
双方向のコミュニケーションを円滑にするためには、「倉庫連絡画面」を開発しました。
注文情報に追加や変更などの細かい変化が発生すると、人が操作しなくても、学販システムから「倉庫連絡画面」へ自動的に反映され、注意を促します。外注倉庫が変更内容を確認したら、クリックするだけで、サス・スポーツプロダクトの担当者へフフィードバックできるしくみです。
注文情報の変更や、お客様からの配送日指定などのイレギュラーな情報も、学販システムの画面からそのまま連絡できるようになりましたので、個別のメール連絡に手間をかける必要もありません。

プレオーダーの予測精度が大幅に向上
システム刷新を契機として、新しい機能も開発しました。
そのひとつが、プレオーダーの数量計算機能です。
学校指定品の多くは海外生産品であり、発注から納品までに時間がかかります。しかし学校販売は、納期遅れ、在庫切れが許されない業態です。
そこでサス・スポーツプロダクトは、4月から使う衣類は、前年の5月ごろにメーカーへプレオーダーしておくことで、納期を厳守する工夫をしてきました。
プレオーダーの数量は、高精度に予測する必要があります。足りなければ、追加注文には時間がかかりますし、多すぎれば滞留在庫を抱えることになります。学校指定品は流用ができません。
そこで開発したのが、過去3年の実績から平均値を割り出して、プレオーダー数に反映する機能です。
今年は、実績をもとにした精度の高いプレオーダー数量を、サイズ明細まで網羅して短時間で作ることができました。
今後、プレオーダーするメーカーを拡大することも検討しています。
システム連携とクラウドへの移行がもたらした大きな波及効果
「今回のシステム入れ替えで、マンパワーからの脱却が一段と進みました。ECサイト連携、システム統合、クラウドへの移行などには大きな意味があり、間接的な効果も広がっています」と木幡常務は語ります。
そのひとつ、ECサイトを構築し、基幹システムとも連携したことで、注文データの取り込み作業にとどまらず、社内のオペレーション全体にプロセス見直しの機運が起きて、業務効率化が幅広い領域で一気に進みました。
また、サス・スポーツプロダクトでは、学販の繁忙期は「学販シフト」と呼ぶ社内体制をとり、就業時間も変更します。
「業務のシステム化が進んだことで、複数業務の兼務も柔軟にできるようになり、季節変動へ対応しやすくなったと感じています」と木幡常務は言います。
さらに、経理業務と、閑散期の追加注文処理などは、RPAを用いた自動処理プロセスを増やしており、業務効率アップが着々と進んでいます。
業務処理時間を従来よりも短縮し、社員の貴重なマンパワーは、新たな取り組み・企画や、お客様対応へ振り向けたいと、木幡常務は考えているのです。
「コロナ禍対応を踏み台にして、当社は大きなステップアップを遂げることができました。システム刷新の先行投資はかかりましたが、すぐにプラスに転じて、大きく成長するカギを手に入れたのです」と、木幡常務は自信を込めて語ります。
システム刷新の力、DX効果をしっかり捉えたからこその成果といえるでしょう。

今後の展望
自動倉庫を利用するためにJANコード導入が必須に
今後も、ECサイト受注の拡大、会計システムとの連携、運輸会社の送り状発行システムへの連携出力、メーカーの受発注システムとの連携など、改善目標が目白押しです。
JANコードとハンディターミナルによる、物流・在庫管理の改革も緊急課題です。物流業界は自動化が進んでおり、外注している倉庫会社でも、自動ピッキングや自動仕分けを導入することになりました。自動倉庫のしくみを利用するためにも、JANコード導入が必須となっています。
「DXが確実に進化しましたが、まだまだ発展途上です。JSTには、当社が最短距離で目標を達成できるように、一層のサポートをお願いしたい。JSTはDX推進のパートナーです」と木幡常務は期待を語りました。
お客様のご紹介
株式会社サス・スポーツプロダクトは、「スポーツをみんなのものに」という企業理念のもと、1964年に設立。現在は、スクール用品事業へ注力しており、全国の中学・高校・大学・専門学校等に、学校指定品、スポーツ用品用具、オリジナル開発商品を販売しています。取扱商品は、マスター登録している定番品が1800点、流動的な受発注を含めると約3万点。仕入先メーカーは約300社。
お客様満足度向上を常に意識している同社は、業務のシステム化、RPAによる自動化を急ピッチで進めています。豊富な経験を活かしつつ、常に新たなしくみづくりにチャレンジすることで、成長を続けてきた業界トップ企業です。

株式会社サス・スポーツプロダクト 様
代表者:代表取締役 伊藤達也 / 業種:スポーツ用品、学校向け商材の専門商社
事業内容:学校指定の体育用品・制服の販売、オリジナル用品の企画・製造・販売、体育館等のメンテナンス、各種スポーツ施設の企画・設計・運営
URL:https://www.sas-sports.co.jp/

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