導入の背景
増え続けた300社以上の取引先、8,000超の商品。アナログからの脱却を決意
お客様の仕入商品が多種に渡ると、1社では揃えきれないことがあります。数社に注文することになり、そのぶん納品書や請求書の管理負担も大きくなります。
「そこで弊社では、お客様が求める多種の商品を複数先に注文しなくてもいいように、すべてを一括で揃え、一回でお届けしています。『ワン・オーダー、ワン・デリバリー』が独自の仕組みです」と語るのは、専務取締役の高橋亮平氏(以下、「高橋氏」)
この仕組みを支えているのは、全車“正社員ドライバー”による配送体制です。繁忙期には一部外注も検討したものの、「最後にお届けするのは、自社の正社員であるべき」という信念を今も貫いています。
「お客様の厨房や倉庫の配置、在庫の置き方まで理解しているのが正社員ドライバー。だからこそ、注文書の一行からでも意図が読み取れる。配送は単なる“運ぶ作業”ではなく、“信頼を届ける仕事”なのです」(高橋氏)
こうした独自の仕組みにより、顧客との信頼関係は強固なものになっていました。その一方で、300社以上の取引先と8,000点超の商品を人の手で処理することには限界がありました。
「伝票はすべて手書き。人手不足の中、アイテム数も多いのでとにかく複雑。出荷準備の負担が大きく、ドライバーにも影響が出ていました」と高橋氏は振り返ります。
“アナログからの脱却が必要だ”──。
そう感じた高橋氏は、各社のシステムを調べ回り、ネット検索と1通のDMをきっかけに食品卸向け販売・在庫管理システム「楽商」フーズに辿り着きました。
複数のシステムを比較し、最終的に導入を決断。その理由は「うちの現場に合う」という直感でした。
「標準機能のレベルで業務の8割が完結すると感じました。特に発注と在庫管理の機能が優秀で、カスタマイズで“現場仕様”にできる柔軟性があったのです」(高橋氏)
導入後の変化
伝票の山と転記作業から解放。事務スタッフが笑顔で定時に帰れる日常へ
商品番号、品名、数量、単価、グラム数……。たくさんあるアイテムを手書きで記入し、複数の仕入先伝票に転記する作業に追われる日々。しかも、取引先ごとに専用の納品伝票があり、システムに売上を入力後、専用伝票に手書きで転記を行わなくてはなりませんでした。
時間も手間もかかる上、記載ミスも発生していました。
「商品名は長くても一字一句正しく書かなければならず、容量などを記入し忘れると問い合わせが来てしまいます」と仕入担当の鈴木氏(以下、「鈴木氏」)。当時は、対応に追われていました。
「楽商」フーズを12名の事務スタッフ全員が利用したところ、その効果は明確に現れました。
売上を入力するだけで、自動的に得意先の指定伝票に反映されて発行可能に。結果、手書き作業はゼロになりました。かつて朝8時から夜8時までかかっていた事務作業は今では17時に終了。1日あたり約3時間の削減を実現しました。
「夜遅くまで残っていたスタッフが定時で帰れるようになりました。ミスも減り、仕事の質も上がりましたね」(高橋氏)
「『楽商』フーズで、ほぼすべてがまかなえる。もう紙の伝票には戻れません」(鈴木氏)
年に数回ある仕入価格改定。新価格への作業が、“丸1日”→“1時間”に。
価格改定のたびに、メーカーから送られてくる紙の一覧表。
その中から該当商品をマークし、Excelへ手入力して確認する。
「価格を間違えるとやり直し。正確に反映されているか、紙と突き合わせて何度も確認する必要がありました」(鈴木氏)
作業には、丸1日かかるのが当たり前。システムは導入していたものの、社内業務すべてはカバーできず、事務スタッフは働き詰めで長時間労働につながっていました。
「現場の負担を減らしたかった。でも人を増やせば解決する話ではない。今の人数で回せるシステム導入が必要だと感じていました」と高橋氏。
「現在は、メーカーから受け取るExcelデータを『楽商』フーズに取り込み、単価マスタ一括更新することで、瞬時に反映させられます。あれだけ時間と労力がかかっていた手作業が、今ではわずか1時間になりました」と事務スタッフの尾内氏(以下、「尾内氏」)も、その変化に驚いています。
売上と同時に発注。リアルタイム発注が実現する、スピードと精度の飛躍
もう一つ、運用の要となったのが売上と同時に発注を行う独自の仕組みです。
標準機能では、「受注→発注(受発注同時)→仕入→納品→売上(売上同時仕入)」という段階を経ます。
東京カセーでは、売上の約3割を特定の仕入先との協力体制で対応しており、2社間では、効率化のため、午後1時までに発注を行うと、翌日必ず商品が入荷するという商習慣が確立しています。その迅速性もあり、伝票作業がかなりの負担となっていました。
前日に注文を受け、翌朝には商品が届く――このスピード感を実現するためには「受発注同時処理ではなく、売上と同時に発注を行って、翌日すぐに出荷作業が行えるように納品書まで発行しておく」という独自のカスタマイズを行いました。それにより、商品が仕入先から届いたら納品書を照合して検品もできるようになりました。
「売上の時点で発注書が自動的に作成されるので、伝票転記が不要です。得意先への納品が完了したら発注データを呼び出して仕入データを作成できるので、入力作業も楽になりました。これまで手書きだった工程が僅かな時間で終わるようになりました」(高橋氏)
こうして効率化されたシステムと、正社員による責任配送が組み合わさり、「ワン・オーダー、ワン・デリバリー」という東京カセーの根幹をより強固に支える仕組みが完成しました。
「パッケージソフトでありながら、柔軟にカスタマイズできるのが『楽商』フーズの魅力です。現場の動きに合わせてどのようにしたら効率化できるかを考え、業界を熟知した営業マンが最適なものを提案してくれるのも心強いです」(高橋氏)
目指すのは〝人とのつながりを強固にするデジタル化“
「誰が何を発注し、どこまで処理が進んでいるか」。
在庫の残量、仕入先への発注状況、納期、入荷予定など、あらゆるデータがリアルタイムで共有されるようになり、今では全社員がパソコンを開けば一目で把握できるようになりました。
「誰かが休んでも、状況を瞬時に把握でき、他の人がすぐ引き継げます。わざわざ聞いて確認する必要はありません」(鈴木氏)
社内の業務全体がスムーズになったことによる嬉しい副産物もありました。以前は“手を動かす伝票作業”が大半だった事務職が、今では営業見積もりなど他の仕事もこなせるようになりました。営業や配送スタッフとの情報共有も円滑になり、顧客対応のスピードと正確性が向上しました。
「楽商」フーズを導入して効率が上がった。社内全体で“届ける力”が上がった。それだけでなく、「社員の意識も変わった」と高橋氏は実感しています。「もっと“人”に時間を使えるようになりました。社員同士が話し合い、業務改善を考える時間、お客様の話を聞いたり提案する時間などを通して、“人とのつながりが強固になりました。それが一番の変化です」(高橋氏)
「『これもできる』『あれも便利』と気づくたびに仕事が楽しくなり、“ワクワクする働き方”までできるようになったのです」とも言葉を続けます。
東京カセーは、今日もデジタル化を進めながら走り続けています。“食”を届けるという仕事を通じて“人と地域”を支えるために。
お客様のご紹介
神奈川県横須賀市。海と坂道が交差する街の一角に、70年以上にわたり地域の「食」を支え続けてきた「東京カセー株式会社」はあります。
飲食店、病院、介護施設、学校給食、そして防衛省関係の官庁施設まで、地域のあらゆる食の現場に、毎日欠かさず食材を届けてきました。
創業は1949年。まさに戦後の混乱期、かき氷のシロップやジュース原料の製造から始まりました。今では肉や魚などの生鮮食品から乳製品、調味料、冷凍食品、カット野菜、そして調理器具や包装資材に至るまで8,000点を超えるアイテムを取り扱う総合卸企業へと成長。注文のうち約7割は自社在庫で賄っており、残りの約3割は都度、仕入れ先に発注をかけています。
取引先は300社以上。それに対し、従業員20名、うち12名が事務、8名が配送という少人数体制にも関わらず、全配送を「正社員による責任配送」で行うのが、創業から76年経った今でも変わらぬ同社の誇りであり、他社にはない強みとなっています。
東京カセー株式会社
代表者:代表取締役社長 高橋 誠一 / 業種:業務用食品卸売業
事業内容:弊社では、調味料・飲料・ラーメン・缶詰などの常温食品、チーズ・バター・うどんなどの要冷食品、菓子などを
外食産業や病院、介護施設等の医療施設向けに、安心で安全な食品の卸事業をサービスとして展開しております。
URL:https://www.tokyokase-k.co.jp/index.html
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