導入の背景

業務部 係長 松林めぐみ氏
2009年から「楽商」機工ACEを導入しているリベラ電子株式会社((以下、「リベラ電子」)は、システムのバージョンアップを機に、クラウド化を前提に運用面の課題を整理し、再構築を行いました。
「海外からの輸入品については船便を利用するためにリードタイムが長く、発注してもシステム上、仕入処理を行わないと “在庫がない”と見えてしまうことが多々ありました」と、業務部係長の松林めぐみ氏(以下、「松林氏」)は語ります。
また、営業担当者が自己判断で倉庫在庫を確保してしまうケースもあり、実在庫とシステム上の在庫にズレが生じやすい状況が常態化していました。
その結果、システム上では在庫が不足しているように見え、緊急購入や割高な仕入れが発生することも少なくありませんでした。
業務の課題
在庫情報を「リアルタイムで共有できていない」ことが混乱の原因に

課題を整理するとその本質は、発注残や引当状況を含めた在庫情報を、
リアルタイムに共有できていなかったことにありました。
- システム上では、入荷済みの倉庫在庫しか引当対象にならない
- 一方、営業担当者は海外に発注済みの数量も前提に受注活動を行っている
- 営業担当者ごとの引当状況を把握できる仕組みがなかった
この状態では、営業・倉庫・発注部門の判断が揃わず、在庫不足による緊急購入が起きやすい環境になっていました。
受注に対し在庫不足が起きると、会社は緊急購入へ踏み込まざるを得ません。流通在庫やネットで部品を確保しますが、その単価は通常の10〜20倍に跳ね上がることがあります。
「かつては10万円の部品を30万円で購入し、1回の不足で30〜40万円規模の追加支出が出た例もありました。納期を守るためだけど、本当に胃が痛かったです」この松林氏の言葉から、当時の混乱状況がうかがえます。
課題の解決
現場の判断とシステム上の在庫情報が常に一致する運用を実現

バージョンアップ後の運用では、在庫管理の考え方そのものが変わりました。
倉庫在庫だけでなく、海外への発注残からも引当できる仕組みを構築しました。さらに、営業担当者ごとでも引当ができるようにカスタマイズしました。その結果、
- 誰がどの在庫をどれだけ引当しているのか
- あとどの程度引当可能なのか
が一目で分かるようになり、現場の判断とシステム上の在庫のズレが解消されました。
効果はすぐに現れました。不足在庫による緊急購入は“ほぼゼロ”になり、10〜20倍の単価での仕入れ購入といったコストが、日常的に発生しなくなりました。
在庫管理の精度が上がると、在庫確認・再手配・納期調整といった作業が一気に減ります。現場が本来やるべき仕事に集中できる時間が、確実に取り戻されていきました。
導入の効果
在庫のズレと緊急購入を根本から防止できた

バージョンアップ後の運用では、次のような効果が現れています。
- 発注残を含めた引当管理により、
在庫不足による緊急発注がほぼ発生しなくなった - 営業担当者ごとの引当状況が可視化され、在庫を巡る社内の認識ズレが解消
- システム上の在庫と実在庫のズレがなくなり、在庫管理の精度が向上
現場では「在庫がある・ない」で迷うことが減り、日々の業務判断がスムーズになりました。
ロット管理と的確な出荷指示が、現場の迷いを消した

電子部品は入荷時期ごとにロットが変わり、品質や保証の観点からも先入れ先出しが欠かせません。万が一のリコールの際にも、ロット管理は必須。しかし1,000点もの取り扱い商品を人の手と記憶に頼る運用には限界がありました。
「入荷順にロット番号が自動採番する仕組みにして、先に入荷したものから順番に出荷するという“先入れ先出し”が担保されるようになりました。自動になることで、手入力が不要になり、取り違いと入力ミスが大幅に減少しました」(松林氏)
さらに、受注時点で「このロットで出す」という出荷指示書が発行できるようにしました。
「指示書がちゃんと出るので、現場で悩む時間がないんです。迷わないで済むことが一番の効率化です」(松林氏)
今では、入荷予定や納期回答も一覧化され、短い朝ミーティングだけで今日の段取りが即決できます。探す・考える・確認する時間が削られ、現場の流れが一直線になりました。
クラウド運用が、業務継続と働き方の柔軟性を支える
クラウド運用により、災害時や緊急時でも業務を継続できる体制が整いました。
また、場所や端末に依存せずシステムにアクセスできるため、リモートワークなどの業務の柔軟性や情報共有のスピード向上にもつながっています。
まず、営業の行動が変わってきました。在庫と納期がリアルタイムで見えるため、顧客前で即答できる場面が増え、提案までの時間が短縮されました。営業自身がシステムを頻繁に見るようになり、数字と在庫を踏まえた提案が日常化しています。
そして、営業アシスタントもリモートを活用し、1人の仕事を2人、3人体制で共有して回すようにしたことで、“人が抜けても回る組織”に変化しました。結果、コミュニケーションの頻度が増して情報共有の質が向上。必要な人だけが短時間集まって、その場で瞬時に判断ができるようになったのです。
クラウド運用は、今回の仕組みを支える重要な役割を担っています。
今後の展望
リベラ電子は、さらなる業務効率化を視野に入れています。
「バーコードやハンディ端末の導入によって、入荷から出荷までの取り違いや入力ミスをさらに減らす。そして、ルーチン業務の一部をAIや自動化で置き換える。徹底的にヒューマンエラーを減らして、人が本当に向き合うべき判断や提案に時間を使えるようにすることが目標です」(松林氏)
基幹システムを整えることはゴールではありません。会社が“変わり続けられる土壌”をつくることです。リベラ電子は、いまそのスタートラインの上で次の未来へ踏み出そうとしています。
お客様のご紹介

リベラ電子は、群馬県高崎市を拠点に、電子部品・電子機器関連の販売や供給を行っている企業です。
創業から40年間、国内外の仕入先ネットワークを活かし、日系主要メーカー各社の正規部品をはじめ、多品種の部材を必要なタイミングで調達し、安定的に届けていることが強みです。
特殊な形状、細部にこだわった部品や機器の要望にもこたえ、お客様の会社では用意できない試作品用の必要部品をそろえ、加工するお手伝いもしています。
基盤から実装まで、提携工場で対応可能。製造業を中心とした顧客の調達・生産を支えるパートナーとして、迅速な納期対応ときめ細かな提案力で信頼を築いています。
リベラ電子株式会社
代表者:ケン ハウエンシュタイン / 業種:電子部品・半導体の専門商社
事業内容:国内外の電子部品を幅広く取り扱う専門商社。常備在庫と調達ネットワークを活かし、小ロットから量産まで柔軟に対応。生産終了部品の代替提案や基板実装支援を通じて、電子機器メーカーやEMS企業の開発・生産をサポート。
URL:https://www.sasakikizai.co.jp/
- どのサービスが一番適している?
- 課題がまだまとまっていない。
- こういう事例はある?
- 見積もりだけでもいい?

